皮膚科 副部長 松岡 百合子
コロナ禍の中、自粛生活を余儀なくされ不安やストレスを抱えている方が多いせいか、統計はありませんが帯状疱疹が増えていると感じます。強い痛みを伴うことの多いこの厄介な病気について、簡単ですがご説明します
【帯状疱疹の原因】
帯状疱疹の原因は、水ぼうそうと同じ水痘・帯状疱疹ウイルスです。このウイルスに初めて感染すると水ぼうそう(水痘)を発症します。
水痘が治癒した後もウイルスは脊髄から出る後根神経節内に潜伏していて、免疫力が下がると再活性化し、神経節から皮膚に移動して帯状に赤い丘疹や水疱が神経の走行に沿って出現します。免疫力が下がる原因としては、加齢、疲労やストレス、その他悪性腫瘍など免疫力が下がる病気も挙げられます。
【症状】
一般的に、はじめは片側の神経分布領域に一致して痛みや違和感などが5日から1週間続きます。この時期は発疹が出ていないので診断がつきません。頭痛や腹痛、腰痛として脳神経外科や整形外科、消化器科など受診される方もいらっしゃいます。その後、その部分にやや盛りあがった赤い斑点が出てきて、間もなく赤い斑点の上に透明な水疱ができそれが黄色い膿疱になります。ひどいと爛(ただ)れたり潰瘍になることもあります。1週間過ぎれば治癒に向かい、かさぶたになり脱落し、2〜3週間で治癒します。
【治療】
重症度は様々ですが、患者さまの抵抗力によって決定されます。初期に軽症でも無理は禁物です。抗ヘルペスウイルス薬の全身投与をできるだけ早期に開始することによって治癒までの期間を短縮し、合併症や後遺症を抑えることも期待されます。必要に応じて消炎鎮痛薬等を併用します。
重症の場合、入院して抗ヘルペスウイルス薬を点滴することもあります。
【合併症】
目のあたりの帯状疱疹では角膜炎や結膜炎、耳から顎のあたりでは耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺(ハント症候群)、腹部の帯状疱疹では腹部が膨隆したり便秘になったりします。外陰部領域ですと尿閉がおきたりします。
【後遺症】
急性期の痛みは皮膚や神経の炎症によるものですが、神経の損傷によりその後も痛みが持続することがあり、帯状疱疹後神経痛と言います。ペインクリニックなどで専門的な治療が必要なこともあります。
皮膚症状が重症で高齢者であるほど帯状疱疹後神経痛が残りやすく、初期の抗ウイルス剤の投与が重要だと言われています。
【ワクチン】
50歳以上で水疱瘡にかかったことのある方は、帯状疱疹の予防としてワクチンの接種をおすすめします。2種類あり、それぞれ長所と短所がありますので医師にご相談ください。