内科 副部長 手塚 信吾
【狭心症とは】
成人の正常な心臓は1日に10万回ほど収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送るポンプの役割をしています。その心臓は筋肉(心筋)で構成されていますが、心筋は冠動脈と呼ばれる血管を介して酸素・栄養を受け取っています。
冠動脈が何らかの原因によって高度に狭窄・閉塞すると心筋に十分な血液が行き届かなくなり、「虚血」という状況が生まれます。虚血に伴って発作的な症状・サインが出るものの、心筋が壊死するまでには至っていないものを狭心症と呼びます。また、進行すると心筋梗塞という命に関わる疾患につながることもあります。
【症状や原因は?】
狭心症は主に3つの種類に分けられます。発作的な胸の痛み(圧迫感・絞扼感)・背中の痛み・みぞおちの痛みなどが代表的な症状ですが、症状の出やすい状況や時間帯には違いがあります。また、「放散痛」といってあごやのどの痛み・腕や肩の痛みを伴うこともある一方で、ご高齢者や糖尿病患者さんの中には全く症状が出ないまま病気が進行してしまっているケースもあります。
➀ 労作性狭心症
動脈硬化によって冠動脈に狭窄や閉塞を生じるものです。動脈硬化は血管の老化現象でもありますが、年齢のほかに糖尿病・高血圧・脂質異常症・喫煙・肥満・狭心症の家族歴などが危険因子とされています。運動や労作時には心筋がより多くの酸素を必要としますが、冠動脈に狭窄があるとそれが十分に行き届かないため、狭心症状を生じます。
② 冠攣縮性狭心症
冠動脈が痙攣(攣縮 れんしゅく)してしまい、狭窄や閉塞を生じるために症状が出現する狭心症です。自律神経の異常が原因とされていて、発作の多くは安静時に生じます。また、夜間から早朝にかけて発作が起こりやすいことも特徴のひとつです。
③ 微小血管狭心症
比較的近年になって注目されるようになってきた病態で、冠動脈末梢の直径0.1mm以下の細い動脈の拡張不全や攣縮によって狭心症状が生じるものとされています。原因として女性ホルモンの関与が疑われていますが、男性にも発生することがわかってきていて、まだまだ全容が解明されていない疾患です。
検査や治療は?
まずは症状について詳しくお聞きします。続いて血液検査・心電図検査・超音波検査などを行って一般的な心臓病のスクリーニングを行いますが、狭心症が疑われる場合は「冠動脈の評価」が必要となります。当院では冠動脈検査として、冠動脈造影CTや心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)をご案内しています。検査から得られた状態に合わせて、薬物療法・カテーテル治療(バルーン拡張治療やステント治療)・バイパス手術(外科手術)などの治療法をご提案いたします。
おわりに
狭心症は、放置すると心筋梗塞に進展して命の危険性を伴うこともあります。「狭心症」の段階での診断と、予防的治療がとても重要です。
2022年4月より、当院でも心臓カテーテル検査・治療を行うことが可能になりました。 気になる症状がある方は循環器内科外来までご相談ください。