消化器センター 消化器内科副部長 権 勉成
はじめに
膵癌は統計上、罹患数と死亡数がほぼ等しく、治癒が得られにくい難治性固形癌として知られています。同じ消化器領域の胃や大腸と異なり、いまだ「早期膵癌」という定義すら確立されていません。
腹痛など何らかの症状が出現した際には膵臓周囲の重要な血管(腹腔動脈・上腸間膜動脈)や隣接する臓器、神経などに浸潤※1し、肝臓や遠隔リンパ節などに転移し、既に手術ができない状況に陥っていることが多く、治癒を得るためには早期発見が何より重要となります。
膵癌のほとんどは病理学的に浸潤性膵管癌に分類され、膵管(分枝)の上皮から発生し、癌の増殖に伴い膵実質に浸潤し腫瘤(しこり)を作っていきますが、腫瘍径と生存率が密接に関連していることが分かっています。
手術後の5年生存率は癌が膵管上皮にとどまる上皮内癌では90 %前後、腫瘍径1cm以下で80%、1-2cmで50%、2cm以上で20%以下と報告されています。つまり腫瘍径※2が大きいほど、手術後の再発も増えてくるため、治癒を目指すには腫瘍径の小さい段階で発見し、手術を行うことが重要となります。
※1 浸潤(しんじゅん):がんがまわりに広がっていくこと。水が少しずつしみ込んでいくように、次第にがん細胞が周囲に入り込み、拡大していくこと。
※2 腫瘍径(しゅようけい):腫瘍の大きさ(直径)
膵癌のリスクファクターと囲い込み
膵癌診療ガイドラインによると、これまで膵癌のリスクファクターとして判明しているものとして、遺伝性膵炎、膵癌家族歴(1親等内)、慢性膵炎、大量飲酒、喫煙、肥満、糖尿病、膵のう胞(膵管内乳頭粘液性腫瘍:IPMN)などが挙げられます。特に膵のう胞を有する方は膵臓全体が膵癌の前癌病変(発生母地)と考えられています。また糖尿病については新規発症時や血糖コントロールが悪くなってきた時に要注意です。膵癌の可能性を疑い、すぐに画像検査を行うことを強くお勧めします。
膵癌の画像検査法
膵癌の診断にあたっては従来の検査法である体外式超音波、造影CT、MRI(MRCP)に加えて、超音波内視鏡(EUS)が非常に有用な検査法です。 特に20mm以下の小膵癌に対する感度はCTで40-67%、MRIで33%、EUSで90-100%と報告されています。EUSは外来でも検査可能であり、特に小膵癌の診断にEUSは必要不可欠な検査法です。
終わりに
全ての膵癌患者さんを早期に発見することは現実問題、非常に難しいですが、このようなリスクファクターを有する方(特に膵のう胞)については厳重な経過観察により膵癌を早期に発見できる可能性があります。
当院では膵癌に対する詳細なEUS診断が可能です。上記のような膵癌のリスクファクターを有する方は消化器センターまでご相談ください。
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